栄養学研究科の学び

The Graduate School of Nutrition

栄養学の専門能力を修得し、多彩な分野で活躍

本研究科は、医学・農学・家政学の領域をも包括する栄養学や臨床検査学の分野での研究者および高度専門職業人の養成を目的にしています。研究組織は8グループあり、最新鋭の研究機器・設備が充実。研究活動に関しては、国際学術雑誌に多くの成果が掲載され、高く評価されています。徹底した少数精鋭主義で、教員の個別指導を受けながら、科学的思考法・実験技術・データ解析力・情報処理能力など、高度な研究能力を身につけることができます。

めざせる進路

管理栄養士、臨床検査技師、民間企業の研究職、大学・専門学校教員、研究機関研究員、小中学校栄養教諭(専修) など

研究分野と内容

教授  佐々木 康人

血栓形成の機序とその予防を主に実験動物を用いて研究している。He-Neレーザーによって実験動物や疾病モデル動物の脳血管に血栓を形成し、血栓形成に及ぼす各種因子の解析を行っている。最近、話題の多い一酸化窒素と性ホルモンの血栓形成に対する影響や脳の微小循環も研究している。

教授  竹橋 正則

分子標的薬とは、ある特定の分子の働きを低分子化合物や抗体によって制御する薬で、主にがんの個別化医療に用いられている。種々の分子標的薬について、その治療効果や副作用に関連する分子について解析し、がんの個別化医療に役立てることを目指している。これら分子標的薬の治療効果予測に利用できる新たなマーカーの同定と、治療効果改善に関わる分子の解析を行っている。また、これら分子標的薬が正常な幹細胞に与える影響についても研究している。

教授  津川 尚子

超高齢社会のわが国において加齢性疾患予防は重要な課題です。脂溶性ビタミンであるビタミンD、ビミンKは加齢性疾患といえる骨粗鬆症の予防に役立つだけでなく、心血管疾患予防、がん細胞や脳 神経細胞の増殖・分化、免疫調節、感染性疾患の重篤化予防に関与することがわかってきました。近年、これらのビタミンの不足・欠乏が問題となっており、栄養疫学研究とともに基礎研究を合わせたトランスレーショナルリサーチを行い、加齢性疾患の予防に貢献することを目指します。

教授  藤岡 由夫

動脈硬化の発症機序の解明と治療を目的として、脂質異常症(特にリポ蛋白代謝異常)、高血圧症、メタボリックシンドロームの臨床および基礎研究を行っている。そして循環器内科専門医指導医としての経験を通じて、皆さんと一緒に病態を把握し、臨床検査を理解し、医師や看護師とチームを組んで食事療法が実践できるようになることを目指している。

教授  南 久則

「消化管から見た健康・栄養」をメインテーマとして、栄養素の吸収機構の栄養生化学的解明に取り組んでいる。
1. 糖・アミノ酸・ペプチド吸収担体の調節
2. 食物アレルゲンの腸管透過機構
3. 腸内細菌叢の変動と疾患
4. 加齢に伴う消化吸収機能の変化
5. 炎症性腸疾患患者の栄養アセスメント

教授  水野 千恵

研究分野は調理科学と食育である。調理操作による食品成分および食品機能性の変化に関する研究を以下に示す内容を中心に、おいしさから健康へという視点で研究を進めている。
1. 炊飯水が米飯の性状と嗜好性に及ぼす影響
2. 調理によるミネラル量の変化
3. 調理に関する実態調査

教授  和田 晋一

生理機能検査(呼気ガス分析装置、呼吸機能測定装置、筋電計など)をベースに呼吸・循環から神経まで生体情報に関する研究を行っている。
1. 1次微分波形分析法によるカプノメーターを用いた肺の換気/血流不均等分布の分析
2. 特殊ガスを用いた精密呼吸機能のハイブリッド・シミュレーター教育用ソフトの開発
3. 顔面神経麻痺の予後診断検査である NET,Electroneurography(正中法)の研究・開発

教授  山下 勉

微小循環の恒常性維持に関する種々の因子の影響について研究を行っている。基礎研究として血管発現タンパク、血栓形成溶解の解析に実験的動物モデルとイメージングによる画像解析を行っている。臨床研究としては血小板療法における血小板機能検査について循環器系疾患を対象にその臨床応用の研究を行っている。

准教授  石井 剛志

食品機能性成分、特に茶や果実などの植物性食品に含まれるポリフェノールや食品タンパク質の機能性を活かした食品開発を目指し、以下に示す内容を中心に“食と健康”の視点から研究を進めている。
1. ポリフェノールの機能性発現機構の解析
2. 渋味の発現機構と生理的意義の解明
3. 食品機能や酸化ストレスの新規評価技術の開発
4. 食品由来タンパク質・ペプチド素材の開発

准教授  田丸 淳子

特定給食施設における人事管理(リーダーシップ)に関する研究、要介護状態の高齢者に対する栄養・食事管理に関する研究。
下肢筋力や食事評価によるロコモティブシンドローム予防に関する研究を通し、高齢者の健康寿命の延伸やQOLの向上を目指している。

准教授  大平 英夫

短鎖脂肪酸とは炭素数が2から6の脂肪酸を指し、主要な構成物は酢酸、プロピオン酸、酪酸である。中でも酪酸に焦点を当て、免疫細胞の応答に対する変化、脂肪細胞の代謝に及ぼす効果、これらの作用機序について基礎研究を行っている。
また、外部医療施設の協力の下、食事療法、栄養管理の効果に対する観察研究も行っている。

准教授  坊池 義浩

研究項目/脊髄性筋萎縮症、輸血医療
1. 脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy : SMA)の発症に関連する遺伝子群および重症 度を修飾する遺伝子群の研究;指定難病であるSMAは進行性の疾患で、治療をしなければ病状は進行し、全身の運動機能に大きな影響を及ぼす。早期にSMAを発見・診断し、適切な治療へ向かわせることを目指している。
2. 本学女子駅伝競走部員のパフォーマンス向上への研究的支援;部員の体組成測定・血液検査および解析を行い、健康な状態で競技成績を向上できるような研究的支援を行っている。

准教授  吉村 征浩

食品成分の機能性に関する研究を行っている。特に腸内細菌叢へ影響を与えうる成分に力を入れている。腸内細菌叢は、宿主であるヒトの健康状態に深くかかわっており、「腸内細菌叢の乱れ」は、生活習慣病など様々な疾患の原因となっている。腸内細菌叢の乱れを正常化することは、疾患の予防や治療につながる可能性がある。そこで、様々な食品成分が腸内細菌叢に与える影響を調べ、「腸内細菌叢の乱れ」を整えることができる食品成分を発見し、実験動物を利用した疾患モデルへの予防治療効果を調べ、ヒトへの応用を目指している。

講師  伊藤 智

食中毒の予防対策構築に取り組んでいる。具体的には、食中毒菌が市販食品にどの程度汚染しているかや、調理作業中に食中毒菌が食材から手や調理器具にどの程度交差汚染し、食材に伝播するかを調査している。調査対象は、食中毒患者数が最も多い、カンピロバクター属菌である。調査結果から、食中毒予防の具体的な方法を構築し、その方法を広く普及することで、カンピロバクター食中毒患者数減少を目指している。

講師  鈴木 大介

生体組織の恒常性維持に重要な役割を果たす幹細胞の異常は、組織再生の低下や癌をはじめとする各種疾患の発生に直結する。我々はその病因・病態を理解するため、上皮組織をモデルに幹細胞の正常機能に必要な分子機序解明とともに、異常動態に関わる疾患機序について遺伝子レベルで研究に取り組んでいる。近年は「上皮幹細胞で働くp63遺伝子の機能/発現解析」「上皮性疾患の病態メカニズムに関する研究」「自己免疫・アレルギー疾患を導く上皮幹細胞異常の同定」が主要課題である。

講師  田村 行識

糖尿病患者では、筋肉量減少や筋力低下、骨粗鬆症など筋骨格系の異常が引き起こされる。私たちは、健康長寿の実現のため、本病態の発症メカニズムの解明と栄養学的予防法の確立を目的に基礎研究を行っている。主な内容は以下の通りである。
1. 糖尿病性筋萎縮・骨粗鬆症に対する亜鉛摂取の効果の解明。
2. 筋と骨の機能維持における細胞内の亜鉛シグナルの役割の解明。
3. 筋と骨の機能異常が肥満・糖尿病の進展におよぼす影響の解明。

講師  鳴海 愛子

食事摂取状況と心身の健康との関連について、食行動・食知識・食態度と食事摂取状況との関連について、様々な観点から栄養疫学研究を行っている。現在取り組んでいる研究は以下の通りである。
1. 人間ドックのデータを活用した、生活習慣病予防のための研究。
2. 栄養表示を日本人の食生活向上のために効果的に活用するための調査研究。
3. 食品購入履歴を神戸市民の健康管理に活用するための、食事アセスメント法としての有用性と健康度との関連の検討。

講師  松田 広一

ピリミジン代謝に関する研究:ラットをモデル生物として、食餌組成の違いがピリミジン代謝に関わる各種酵素遺伝子の発現制御に与える影響について検討している。
微生物の薬剤耐性化機構に関する研究:環境要因(培地組成、培養条件など)の変動が、腸内細菌を中心とした各種微生物の薬剤耐性化に与える影響について、分子生物学的な側面から検討している。