卒業生の「ヴィッセル神戸」スポーツ管理栄養士、井上さんの特別講義を実施しました

News 2022.11.10

プロサッカーチーム「ヴィッセル神戸」専属のスポーツ管理栄養士、井上なぎささんの特別講義が10月21日、有瀬キャンパスで開かれました。

栄養学部生を対象に、3年次生約80人を含む多数の学生が受講しました。南久則学部長の開会あいさつで始まりました。井上さんは本学栄養学部の卒業生で、大阪体育大学大学院でスポーツ栄養学を学びました。国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊でアフリカのニジェールに栄養指導に派遣された経験を持ち、有名食品会社のスポーツフーズ営業部勤務や国立スポーツフーズ科学センター研究員など多様な職歴を経て、現在は「楽天ヴィッセル神戸」と契約してトップチームの栄養サポートにあたっています。「栄養学部生として、こんな道もありますということをお伝えしたいです」と、学生に語りかけました。

井上さんによると、選手の1試合の走行距離は10・3~12・5キロに達し、うち9~11%がスプリント(全力疾走)という激しさです。栄養サポートの目的は年間を通じたコンディショニングと試合当日のコンディショニングにあり、選手の自己管理能力を高めることが求められます。栄養教育は個別対応のこともありますし、チーム全体でセミナーをすることもあります。

チームでは、キックオフの時間に合わせて食事のスケジュールを決めます。試合のある日は、アウェーはもちろん、ホームゲームでも「補食」を用意します。おにぎりは小さめに。具は肉と魚。サラダも加えて栄養バランスを取ります。食文化の違う外国籍選手の対応は特に気を遣うとの話でした。試合当日も暑熱対策として、尿の色や尿比重をチェックします。海外の試合では気温が40度になることもあり、暑さ対策で選手の深部体温を冷やすことも必要です。一方、遠征先のホテルではメニュー構成を細かくオーダーして、アウェーでもホームでも同じものが出るように気を遣っているとの仕事の細部を説明しました。

「栄養サポートの成果を確認するには、身体組成の変化を調べます。シーズン前と終了後で選手の除脂肪量(筋肉量)が維持されていることや、ビタミンDの充足率が上がっていることが分かりました」と常に数字には敏感です。今後の展望について井上さんは、「選手のコンディショニングは客観的データから評価し、個別に対応すること」だと述べました。

学生からは「スポーツ栄養士になって良かったことは何ですか」と質問が出ました。井上さんは「選手のマーカーの数値を見て、改善したときはすごくうれしい。選手と一緒に改善に取り組み、数字に表れたときはうれしいです」と答えました。

「ニジェールに行ったのはなぜですか」との別の学生からの質問に井上さんは、「テレビで栄養失調の子どもを見て自分に何ができるのかを考えました。栄養学部に入学したのもそのためです」と答えました。「管理栄養士の国家試験は暗記が中心でした。一方、JICAでは答えを探すことから始めなければなりません」として、海外経験がその後のキャリアに役立ったことを補足しました。

受講した別の学生は、「公認スポーツ栄養士に興味があったので参加しました。ヴィッセル神戸で専門的に選手と関わっていて、管理栄養士としての地位を確立していてすごいと感じました。井上さんのような行動力と思考力を身につけて頑張りたいと感じました」と感想を述べました。卒業生でもある井上管理栄養士の講演を通して学生自身に新たな気づきを与える有意義な時間になりました。

本学は、ヴィッセル神戸とパートナーシップ契約を締結しています。本講演会はその一環として実現したもので、両者の特性を生かしながら学生もプロスポーツの現場から多くのことを学んでいます。

  • 井上なぎさ氏の講演を聴く学生

  • 井上氏を囲んで記念撮影を行う学生たち

  • 質疑応答を行う学生

  • 井上氏と栄養学部生